第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界

Photo_50  資生堂ライフサイエンス研究センターの主任研究員である著者が、皮膚に関する長年の研究や最新の医学情報なども紹介しながら、皮膚は第三の脳とも言うべき存在であることを示唆した本です(因みに第二の脳は「セカンドブレイン」参照)。

 本書では、まず皮膚は体を覆っているだけでなく、「表皮の大半を構成するケラチノサイトそのものが、免疫システムの最前線でもあった」ことや、温度や圧力を感じ取る様々なセンサーが発見されているだけでなく、色までも識別しているとする最新の実験結果などを紹介しています。

 また、皮膚は発生学的に言うと外胚葉由来で、脳や神経系と出自は同じであること、表皮は極めて精巧に「自分の形をモニターし、維持するための電気的信号を自分で作っている」ばかりか、培養した表皮細胞=ケラチノサイトを用いた実験では、細胞が低周波の電波すら発信していることが確かめられたとしています。

 更に、皮膚以外の感覚器官である目や耳、舌などはそれぞれ光、圧力、分子などの刺激を受け、それを電気信号に換えるだけですが、表皮細胞であるケラチノサイトは圧力、温度、湿度、分子、光を感じ取り電気信号以外にも様々な情報伝達物質を作り出しており、ケラチノサイトが集合して表皮という組織を形成した時には、ひとつの情報処理システムとなるばかりか、「自分の状態をモニターし、その状態が壊れても、その壊れ具合を顧慮しながら、元に戻す力」に生命の本質を見る思いがするとして「皮膚は第三の脳」であると宣言しています。

 その他にも皮膚に刺激を与えることで治療する針灸治療に関しても著者自身のアトピーなどの治療体験なども交えながらふれたり、皮膚と「こころ」の関連やテレパシーが実在するかどうかといった問題まで言及されており、全体としては誰にでもわかりやすい内容になっています。

(著者:傳田光洋(でんだ みつひろ)、朝日出版社、2007年7月25日 初版発行)

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 漢方的な見地から言えば皮膚(皮毛)は五臓六腑の「肺」と関係が深く、「肺」には「魄(はく)」という人間の本能的な機能や感覚をつかさどるものがあって、「類経」には「魄の用をなすや、よく動き、よく作し、痛痒はこれにより覚(さと)すなり」とあります。

 本書で著者は皮膚を第三の脳と言っていますが、漢方的にはこの「魄」以外にも「魂」〜人間の知力や主観的な考え方〜は「肝臓」にあり、「心臓」にある「神」がこの「魄」と「魂」の調和をとっていることで正常な精神状態が保たれていることになっており、はじめから脳が総てをコントロールしているという西洋医学的な発想はないのですが、科学が進むほど、漢方的な考え方に近づいているように思います。

 ついでに言えば、漢方では「脳」は何をしているところと考えられているかというと、首から上の目、耳、鼻、口などがスムーズに働くようにしているところであって、「こころ」はあくまで「心臓」にあるとされています。

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