健康の基本は「食」と「胃腸」から

当たり前の話しですが、人間は「食べ物」を食べることで生きています。即ち、人間の生命は「食」によって支えられているわけです。よって、「食」が重要であることに間違いはないのですが、もうひとつ見逃してはいけないのが「食」を受け入れる胃腸の働きです。

漢方の考えでは、いくら良い食事をしていても胃腸(漢方では「脾胃」)がちゃんと働かない限り、食べ物から体に必要な栄養素を取り込んで健康を維持するために欠かせない栄養物質である「血」を作り出すことができないばかりか、体にとって不要な成分が余計に取り込まれたりする原因ともなると考えられています。(やせの大食いや、あまり食べていないのに血糖値やコレステロールが高いというようなケースです)

このため、漢方では「食べ物」とともに胃腸の働きを重要視しますが、胃腸にはもうひとつ大きな役割があるとされています。それは、生命エネルギーともいえる「気」の発生に大きくかかわっていると言うことです。「気」というと、陰陽で言うと「陽」であり、人体のもつ様々な「機能」を発現させるエネルギーともいえますが、免疫力や病気に対する自己治癒力も漢方的には「気」のエネルギーです。このため、胃腸の機能の低下から「気」のエネルギーが低下すると免疫力や自己治癒力も低下してしまいます。またやっかいなことに、胃腸自体の機能も更に悪化するという悪循環に陥ります。

漢方では、胃腸の機能は五臓六腑でいう「脾」(西洋医学で言う「脾臓」とは違います)がコントロールしていますが、昔から「脾」の弱い人のことを

「脾」弱=ひよわ

と言います。即ち、胃腸が十分にその機能を発現することが健康の第一歩と言うことです。

ただし、注意して頂きたいのは、例え西洋医学的な検査で胃腸に問題がない(粘膜にポリープや炎症がないなどといった機質面に異常がない)といっても、漢方で重視する胃腸の機能面に異常があることが多く、例えば

△「おなかがすいたー」というような健康的な空腹感がない

△食事の後に「眠たくなる」または「胃のあたりがぽっこりとでっぱる」ような気がする

△便通に関して軟便気味である

△季節の変わり目に体調を崩しやすい

といった自覚症状がある場合は胃腸の機能低下を起こしている可能性が高いと言えます。