「未病」について

 某社のテレビコマーシャルの影響か、「未病」という言葉が広まっています。そもそも「未病」とは漢方独特の概念で、昔から最も優秀な医者は未病のものを治すといわれ、病気になってしまう前の段階で適切な漢方処方などで健康にすることが重要であるとされてきました(「未病」とは 参照)。

 西洋以上に西洋医学一辺倒とも揶揄される現代日本の医療のなかでは、検査至上主義から、例え身体に不快な症状や気になる症状があったとしても検査で異常が見つからなければ、病気ではないとして相手にされないことが多いですが、こういったケースでは、少なくとも「未病」の段階にあることは間違いなく、適切な漢方薬や食養生で気になる症状などが改善されることが多くあります(漢方では自覚症状を最も重要視しますので、何らかの自覚症状がある事は少なくとも健康であるとは考えません)。

 漢方の考え方では、病気になる原因として環境因子(寒さや乾燥、湿気など)と精神的なストレス(五志七情と言って5~7種類に分類します)、生活習慣の3つの側面を考えるとともに、その人の体質的な問題も考えますので、全く同じ自覚症状があったとしても対応策は様々です(極端な例では、同じ人の同じ自覚症状に対しても季節や、その時の状況によって適切な処方は違ってきます)。

 また、「未病」と反対に花粉症などのケースでは、「・・・症」と一般的に言うものの西洋医学的にも明らかな病気(アレルギー性鼻炎)ですし、新薬では対症療法しかないといっても漢方的な考え方で体質改善していくことが、更なる病気の予防にもつながりますので、そういった意味ではもっと大きな病気の「未病」状態としてとらえることも出来ます。

 要するに、何らかの自覚症状が発生する原因を漢方的に解析することで、体内の五臓六腑のバランスなどをとらえて、今後どのような事に注意が必要かと言うことまで考えることが漢方の優れている点で、健康状態から少しバランスを欠いた状態が「未病」であり、「流れ」の中で人間の健康を考えるのが漢方の特徴といえます。

 もう少し詳しく言うと、漢方の考え方では人間の生命現象は全体として一つのもので、何らかの症状があるとしたら、その症状が出ているところだけの問題ではなく、「気」、「血」、「津液(水)」といったものの流れや量の問題、あるいは五臓六腑の状態などに何らかの問題が生じており、あくまでそのひとつの表れとして、何らかの自覚症状が発生したと捉えます。また、そのほかの症状や舌の色などからその症状が出てきている原因を突き止めるというのが、漢方的に解析すると言うことです。

 特に西洋医学は各組織や臓器の物質的な問題~炎症があるとか、ポリープが出来ているとか~を重視しますが、漢方では(特に未病のレベルでは)機能面を重視します。このため、西洋医学的な検査で病変が認められなくても、漢方的な目で解析することで、自覚症状の発生する原因や、養生法を含めた解決策を見つけ出し、それを放置した場合に次にどのような問題が生じるのかといったことまでが類推されます。

 病院の検査で異常がないといわれたから安心するというのも考え物ですが、検査で異常が無くても気になる症状がある場合は、漢方を専門的に勉強しているところ(日本では医師や薬剤師というライセンスはあくまで、西洋医学に関してのもので、漢方を知っているかどうかとは殆ど無関係です)で相談されることをお勧めいたします。

 

 

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