前向きに生きるために必要な条件

考え方で寿命が伸びる

 今年の4月26日付の産経ニュースによると、国立がん研究センターや東京大学などの共同チームによって、日常生活のさまざまな問題に前向きに対処する人は、そうでない人に比べ、がんで死亡するリスクや脳卒中の発症リスクが低いとの研究成果が発表されました。全国10都府県に住むがんではない50~79歳の男女約5万5千人を平均9年余り追跡調査したというもので、「解決する計画を立て実行する」「誰かに相談する」「状況のプラス面を見つける努力をする」といった前向きな対処をする人は、特に態度が定まっていない人と比べ、がんを発症するリスクには差がなかったが、がんで死亡するリスクが15%小さくなっていたそうです。

 前々回の本稿でも、海外における研究で、 “ストレスは有害である”と考えるか、“ストレスは人を成長させ健康にする”と考えるかによって、ストレスに遭遇したときに実際に自分の考えているとおりの結果になるというはなしを紹介しましたが、今回の日本での研究成果も問題に対する日頃の考え方が寿命に影響することが示唆されています。もっとも、2014年におけるアメリカの調査でも、85%もの人が「ストレスは健康や家庭生活や仕事に悪影響を及ぼす」と考えているそうで、日本でもストレスや問題に直面したときにいつも前向きに対処することができる人の割合はそんなに多くはないと思います。

ガッツがないと前向きになれない

 欧米での研究によると、ストレスは悪であるという考え方をしている限り、ストレスに直面したときにストレスホルモンの分泌や血管の収縮などマイナスの反応があらわれてしまうため、ストレスは役に立つこともあるという事実を知ることが重要とされていますが、漢方的に考えた場合、“気”のパワーが十分にある人にとっては、そうかもしれませんが、もともと“気”のパワーの少ない人にとっては、前向きになれといわれてもなかなか難しいものがあります。

  この“気”のパワーとは、言葉をかえればストレス抵抗力の強弱ということになりますが、根本的には“気”の主な生成源である五臓の“脾”が正常に機能しているかどうかが大きく関わってきます。このことは、前回ご紹介した腸内細菌バランスと脳腸相関の関係からもいえることですが、ストレスに対する考え方以前に、腸内細菌バランスをはじめとする胃腸機能が充実していることが大事だということです。簡単にいえばガッツがないとものごとに対して前向きに対処することができないということですが、ガッツとはもともと“はらわた”、すなわち胃腸のことであり、こうした考え方は洋の東西を問わず人類共通の概念として昔から知られていたということになります。

梅雨とストレス

 さて、これから梅雨にかけて湿度が高くなっていきますが、“脾は湿を嫌う”とされ、湿度が高くなると胃腸機能が低下しやすくなります。また、湿気は“気”の巡りを邪魔しますので、日頃から胃腸が弱い方にとっては“気”の生成にますます支障をきたすとともに“気”の巡りが悪くなりがちで、結果的にストレスに対する抵抗力が低下する季節となります。湿邪による症状としては、朝起きてから午前中は体が重だるいとか、手足がむくんだり頭重感がするといったものですが、このような症状を訴える方は基本的にストレス抵抗力が弱く、ちょっとしたストレスが引き金となって睡眠障害や不安による動悸なども発症しやすくなります。こうした症状には、麝香製剤による気つけ作用が奏効するものの、根本的な解決策としては胃腸機能を補うような処方で体質改善を図ることが重要です。

 因みに、ある程度の“気”のエネルギーを持っているもののストレスに対して乗り越えようとして乗り越えられない状態が続いて焦っているような場合は、麝香よりも羚羊角や牛黄などが適しています。いずれにせよ、ストレスに対して前向きに捉えられるようになるためには、胃腸を中心にからだの機能を調えて、ストレス抵抗力を養うことが肝要です。

 

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