さるぼう貝の醤油漬け

140530 赤貝に似たさるぼう貝は、“猿の頬”のような形からそう呼ばれますが、一般的に赤貝よりも小振りで、貝殻の表面の溝の数も赤貝よりも10本程度少なくなっています。赤貝の缶詰の原料としても使われるそうで、味も赤貝に近いと思います。

 淡水と海水が混じり合う汽水域に棲息していますが、塩分濃度の変化に対して貝類は体内のアミノ酸を一般的なL体からD体に変化させることで浸透圧の調整を行っているそうです。

 L体とD体は光学異性体と呼ばれる関係で、生体内のたんぱく質を構成するアミノ酸はL体ですが、遊離型のアミノ酸としてD体が存在し、L体とは異なる生理活性があることが最近の研究でわかってきています。また、L体のアミノ酸とは味が異なることも知られています(L体では甘みがないものでもD体になると甘みを有するなど)。

 この分野に関する研究は始まったばかりですが、食品を単純に糖質、脂質、たんぱく質に分けて分析してもわからないことがまだまだいっぱいあるということは確かです。D体のアミノ酸のほか、植物と共生している土壌菌の人体に対する影響なども研究されはじめましたが、今後そういった研究が進むと“食べもの”は単純な栄養素の集合体ではないことが解明されると思います。

 漢方的には薬食同源というか、食品も生薬と同じように人体に対して何らかの効能を有するものとしてとらえますが、人体そのものも腸内細菌や皮膚の常在菌などと共生している存在ですので、これらに影響するものは結果的に人体の健康状態にも影響しますし、腸内細菌のバランスや種類の違いは栄養物の代謝などに影響します。最近では腸内細菌の種類やバランスは脳腸相関からうつ病などと関連するだけでなく、肥満や糖尿病との関連性が指摘されています。

 こういった事を考えると、“工場”でできた野菜は植物と共生している土壌菌なども含まれていないわけですし、土壌菌の存在がなければD体のアミノ酸も含まれていないと思われ、無農薬や放射性物質が含まれていないというメリットだけで語られるべきものでも無いはずです。

 

 

 

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