玉屏風散

漢方処方解説(8)~玉屏風散(ぎょくへいふうさん)

 この処方は14世紀(1343年)の「世医得効方」を出典とし、「玉屏風」とは「玉(=宝石)」でできた「屏風(びょうぶ)」を身体の回りに張り巡らせる、という意味です。当時は、かぜを引きやすい人の体質改善が主な使用目標でしたが、現代ではかぜの予防はもちろん、花粉症に応用されることの多い処方です。日本に於いては「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」という製品名で売られており、効能としては「身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠感、ねあせ」となっています。

 この処方は、専門的にいうと「衛気(えき)」=外界と直接接する人間の皮膚や粘膜(鼻の粘膜や胃腸の粘膜も含む)を保護している目には見えない「バリア」=を強めることで、漢方で「風邪(ふうじゃ)」とよばれる、かぜのウイルスや花粉、ハウスダスト、温度変化などの影響から身体をまもるものです。

 反対に言うと、しょっちゅうかぜを引くとか、花粉症、通年性鼻炎のほか、お肌が荒れやすいという方は、この衛気(えき)が不足している訳です。また、衛気(えき)が不足する最大の原因は胃腸機能の低下であり、冷たいものの摂り過ぎなど食生活の不摂生が背景にあります。症状が胃腸機能だけであれば、胃腸を整える漢方薬が適応しますが、玉屏風散の場合は、主に体表部の「気力低下」が使用目標であり、効能の「ねあせ」も熱くてかく汗ではなく、体表部のバリアが弱いために身体の中から漏れてくるような汗を指しています。その他、玉屏風散が適合する人は「季節の変わり目に体調を崩しやすい」とか「冷え」や「寒さ」に弱いという特徴があります。

 また、肉体的には元気な方でも、激しいトレーニングなどで大量の汗をかく人は体表部のパワーが低下しやすく、結果的に衛気が不足して花粉症になりやすいといわれており(プロスポーツの選手には花粉症の人が結構多い)、玉屏風散の適応になります。

 花粉症に対しての効果の点では、小青竜湯や麻黄附子細辛湯などの対症療法の方剤と違い、玉屏風散は「対症療法」が半分、「体質改善」が半分というイメージになりますので、花粉症のシーズンが始まってからはベースとして玉屏風散を服用しつつ、症状が激しく出る時は対症療法の処方を併用するというパターンになります。

関連記事

  1. 麻黄湯

  2. 防風通聖散

  3. 葛根湯

  4. 参蘇飲(じんそいん)

  5. 麻黄附子細辛湯

  6. 荊芥連翹湯