動的平衡

Photo  分子生物学者(青山学院大学教授)の福岡伸一先生の新刊です。

 「動的平衡」とは「生命とは、絶え間のない流れの中にある動的なものである」という生命観で、シェーンハイマーという学者が1930年代に行った実験から得られた結論です(→「生命と食」参照)。

 副題(生命はなぜそこに宿るのか)にもあるように、本書では「生命現象とは何か」について、分子生物学的視点からわかりやすく解説されています。目次からいくつか紹介すると・・・「汝とは「汝の食べた物」である(第2章)」、「その食品を食べますか?(第4章)」、「生命は分子の「淀み」(第8章)」などとなっていますが、専門書ではなく一般の方が読まれても十分に理解できる内容だと思います。

(発行所:(株)木楽舎 2009年2月25日発行)

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 著者は、本書の中で人体は2万数千種類のタンパク質からできているが、それらのタンパク質を混ぜ合わせても、そこには生命は立ち上がらない。そこに「エネルギーと情報の出入り」が加わることが必要であるとしています。この考え方は、漢方でいう「生気論」そのものですが、著者は洋の東西を問わず昔からある「生気論」はオカルティズムであると否定しています。

 ただ、「エネルギーと情報の出入りが加わる」という作用をもたらすものが「生気」の作用に他ならないので、漢方的に考えると、著者の指摘していることは「生気論」そのもののように聞こえます。

 漢方の考え方において、生命は「精」という物質から生じることになっており、「精」は人体のあらゆる物質的基礎であると共に、生命エネルギーの元にもなるとされています。また、成長と共に先天的に持っている「精」は減少していきますが、これを補うために食事の中から最も栄養の濃い部分を「精」として補充していくことで、生命を維持していくものとされています。(「精」とは 参照)

 ここで、鶏の卵を思い浮かべていただきたいのですが、卵には「精」のある卵=有精卵と、「精」のない卵=無精卵がありますが、「精」のある卵からは生命が生まれ、「精」のない方からは“ひよこ”は生まれません。この違いは、文字通り「精」のあるなしですが、現代科学をもってしても「精」という物質を特定することはできません。

 要するに、生命現象をもたらすエネルギーというものは確かに存在するわけで、そういったことを漢方では「生気論」と呼び、福岡先生の言葉では「エネルギーと情報の出入り」となっているだけのように思えます。

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