新型インフルエンザ(インフルエンザA)

 今回の新型インフルエンザですが、これまでにないタイプのウイルスであることは間違いないものの弱毒性ではないかと言われています。

 ワクチンが存在しない、タミフルなども効くかどうかわからないといった報道に接すると、いやが上にも恐怖心が煽られますが、ワクチンや新薬がなければ文字通り“絶体絶命”かといえば、そんなことはありません。

 実際に、今回の新型インフルエンザと接しても発症しなかったり、発病したものの回復している人はいるわけで、何が効いたのかというと、言うまでもなく本人の自己治癒力です。この自己治癒力のことを漢方では正気と呼びますが、特にインフルエンザなどではウイルスの侵入を防御している「衛気(えき)」と呼ばれるものがしっかりしていると感染を防ぐことができますし、気のエネルギー(正気)が十分あれば発症しても軽くてすむ可能性が高いと言えます(→「ウイルスから身を守るには」参照)。

 反対に言うと、衛気なり気のエネルギーが低下した状態では危険度が増すわけですが、過労や寝不足などのほか、気のエネルギーを低下させる要因としては冷たいものの摂取によって胃腸を冷やすことが挙げられます。例年ですと、これからの季節、気温もどんどん暖かくなって、つい冷たいものを飲んだり食べたりしますが、今年に限っては体温以下の温度のものを口に入れない(うがいは別です)事をお勧めします。

 さて、今回に限らずインフルエンザの予防には、人混みの中に出かける時のマスク着用、外出先から帰ったら水でうがいをし、手を洗うといったことは基本ですが、中国ではインフルエンザの季節には板藍根(ばんらんこん)という生薬を煎じたものでうがいをしたり内服するのが常識となっています。

 また、とりあえず衛気をパワーアップするためには玉屏風散という処方が最も一般的で、日頃から疲れやすいとか風邪を引きやすい人は、周りで風邪やインフルエンザが流行ってくると、この処方を服用することで皮膚や粘膜にバリアを築くことができます。

 これらの予防策をとっていても発症した時には、漢方では銀翹散などの処方で対応しますが、特に若い人などで高熱が続く場合には究極の高貴薬とされる牛黄を用いて解熱します(「インフルエンザの漢方療法」参照)。

 ただし、今回の新型インフルエンザについては変異株の発生なども危惧される状況であり、急な発熱などインフルエンザが疑われる時には、とにかく各地の保健所に連絡する事をお勧めします。

 ※大阪市では新型インフルエンザの電話相談窓口(06-6647-0951:受付時間9:00~17:30(休日含む))を開設するとともに、24時間態勢の発熱相談センター(06-6647-0956)も設置されました。大騒ぎになるからと躊躇するより、現時点で最高の医療を受けることができる訳ですし、2次感染の防止の意味でも心当たりのある方は連絡されることをお勧めします(パンデミック状態で最も危惧されるのは、医療機関の対応能力を超える患者が発生し、まともな医療が受けられなくなることです)。

関連記事

  1. 梅雨入り

  2. 腰痛の原因は“こころ”の痛み?

  3. インフルエンザ予防と舌の苔の根深い関係

  4. 「お茶って自分の家で作れるんですか」

  5. 夏バテの正体

  6. 春に吹く風に震えるまぶた