COVID-19と血管内皮細胞

血管の老化

新型コロナ感染症では、ウイルスのスパイクタンパク質が主に血管にあるACE2受容体に結合することが知られていますが、今年の8月に京都府立医科大学の研究チームによって、老化した血管内皮細胞は若い血管内皮細胞と比べて新型コロナウイルスに非常に感染しやすく、感染早期の段階では若い内皮細胞に比べて800倍ものウイルスが細胞内に侵入していることをつきとめたとする論文が発表されました。また、同論文によりますと、老化した血管内皮細胞ではウイルスが消失した後でも多くの遺伝子発現に影響が及んでおり、特に血栓の形成に関与する遺伝子発現が強い影響を受けることがわかったとしています。即ち、血管、特に血管内皮細胞が老化していると感染リスクが高くなるばかりか、血栓の発生リスクも高くなるなど重症化リスクが高くなるとのことです。

血管内皮の機能不全

今年の10月に中国科学院の研究チームがネイチャー誌に発表した論文では、新型コロナウイルス感染症は一般的な感染症と違って、肺炎などの肺系だけでなく、虚血性心疾患や心筋症、動脈硬化、肝疾患、腎臓疾患など広範囲にわたって影響しますが、感染を契機に血管内皮細胞がダメージを受けることで、全身の血管内皮細胞が機能不全に陥ることによって発生するとしています。

同論文によれば、すべての血管の内側は内皮細胞で覆われており、血管内皮細胞は、血管の緊張や抗酸化、抗炎症作用などを調節したりするほか、血液が凝固しないよう、多くの抗凝固・抗血栓因子を合成・分泌し、血液の流動性を維持するのに必須の役割をはたしており、この血管内皮細胞が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の直接的な影響のほか、インターロイキン6を始めとした炎症性サイトカインの影響などで機能障害に陥ることが新型コロナ感染症の病態の本質であるとしています。

新型コロナ感染症に関しては、当初、若い人では重症化リスクが低いとされていましたが、自然免疫力の強さもさることながら、そもそも血管が若いことが感染と重症化リスクの低下につながっていた可能性が高いと思われます。

後遺症の問題

ところで中国科学院の論文では、新型コロナウイルスに感染することで血管内皮細胞の老化が進むとされるほか、感染後の後遺症に関しても主に血管内皮細胞の障害が影響を与えている可能性が高いとしています。血管内皮細胞が障害されることで、炎症や血流の悪化や血栓ができやすくなるだけでなく、別の研究では、ヒト脳微小血管内皮細胞における新型コロナウイルス感染は、血管新生因子の分泌を増加させ、ミトコンドリア機能にも悪影響を与えるそうです。こうしたことが、感染後1ヶ月以上続くロングコビッドとよばれるような後遺症につながっているように思います。また、特に日本では、新型コロナに感染したことで、病状自体はたいしたことがなくても精神的なストレスが重くのしかかる傾向にあって、後遺症からの回復を妨げているケースも多いと思います。

ところで、新型コロナウイルスに感染しなくてもワクチン接種後に死亡または後遺症を発症するケースが多いことから、厚生労働省も実態調査を計画しているようですが、今年の9月に広島大学新型コロナワクチンを接種後死亡した4名を解剖したところ、1回目接種で免疫機能がワクチンに反応しやすくなり、2回目接種で過剰反応=サイトカインストームが発生して死亡(死亡時の体温は39℃~46℃)したと推定されるとの発表がありました。また、ワクチン接種後の後遺症に関しては、免疫反応以外にも体内で生成されるスパイクタンパク質が血管内皮細胞にダメージを与えている可能性もありえると思います。

因みに、オミクロン株の場合は旧来から存在するコロナウイルスに近く、のどの粘膜に結合するため感染力は強くても重症化リスクは低くなっています。ただし、ワクチンを何回も接種する方は丹参製剤などで血流や血管の状態を良くしておくことが必要かと思います。

 

 

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