ストレスで長生き!?(1)

 このブログでも春はストレスの季節で、ストレス性の症状や疾患が顕在化しやすい季節であることをお伝えしてきましたが、先日、NHK(Eテレ、「スーパープレゼンテーション」)で放送されたスタンフォード大学の健康心理学者の方の講演~“ストレスと上手に付き合う方法”~では、ストレスそのものよりもストレスに対する考え方次第では、むしろストレスはプラスになるという実験結果が紹介されていました。

 具体的には、アメリカで3万人の人を8年間にわたって調査したところ、大きなストレスを経験した方は死亡リスクが43パーセントも増えたものの、これらの方は「ストレスは健康に良くない」と考えていた人達で、反対に同じように大きなストレスを経験した方でも、ストレスは害ではないと思っていた人達は死亡率は上がらずに、むしろ最も死亡率が低いという結果になったそうです。

 要するに問題はストレスそのものではなくストレスに対する考え方で、ストレスを受けて動悸がする時でも、ストレスはからだに害を与えるという考え方をしている人の心臓の血管は狭くなるそうですが、動悸がすることはからだが活力を上げて挑戦しているしるしだととらえることができた人の心臓の血管は狭くならなかったというハーバード大学の実験が紹介されていました。

 もともと精神的なストレスに関しては、気の持ちようが大きく影響することは知られていますが、ハーバード大学の実験結果は考えさせられる部分が大きいと思います。世の中にはストレスの健康への悪影響については膨大な情報が流されており、ストレスそのものよりもそういった情報によってストレスに対して恐怖感を無意識に持っていることの方が、ストレスそのものよりも健康被害が大きいということです。

 特に動悸を伴うものは心臓神経症と呼ばれる病態がよく知られており、心臓を検査しても異常はないものの動悸や息切れがするというもので、動悸がすること自体が二次的に大きなストレスとなって、更に症状が出るというものです。漢方ではこのようなときに用いるものとして気の流れを速やかに良くする“気付け薬”とよばれるものが古くより使用されてきましたが、こういった方にはハーバード大学での実験結果を伝えることでも大きな効果が期待できると思います(因みに、世の中には、このような有益な情報は単発的に出てくるものの、“スポンサーのつかない情報”は広まらないという原則があり、すぐに忘れ去られてしまいます)。

 ところで、漢方の世界では“安逸過多”といって、あまりにもストレスのない状態も致病因子の一つに挙げられており、“ストレス”=“悪”とも言い切れません。ただし、五志七情と呼ばれる精神的なストレスが過剰になったときには“気”の巡りが滞ることから様々な症状が発生するとされています。ストレスによる身体症状としては動悸だけではなく、胃腸症状や睡眠障害なども含まれますので、総てがハーバード大学の実験のような訳にはいかないですが、少なくともストレスで生じる様々な症状に対応した漢方処方は数多くありますし、そういった漢方処方を服用すると同時に東洋医学的にみたストレスの影響について理解を深めることはストレス抵抗力を増大させ得ると思います。

 

 

 

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