春の鼻血

 今回は春に多い鼻血について。

 鼻血に関しては余程のことがなければすぐに止まるので、普段はあまり相談を受けることはないのですが、今年は放射能の問題から鼻血を気にする方が多いように思います。

 漢方では、打撲などの外傷によるものでない鼻血(難しく言うと「鼻衄:びじく」)の原因(体質)として考えられるものは、いくつかありますが、特に春の時期に多いとされるのは“肝火”によるものです。前回の“健康トピックス”で書きましたが、春は「怒」というタイプのストレスの影響を受けやすく、肝火とよばれる火が発生して肺に影響を与え、五臓六腑の“肺”の一部でもある鼻から出血するというものです。

 また、「怒」というタイプのストレスにさらされていると気が詰まり、“発散”作用のある辛いものが欲しくなりますが、辛いものやお酒の摂りすぎは、やはり“胃火”とよばれる火が発生し、この火が上昇することで鼻血がでるというパターンもあります。

 上記の2パターンは、のぼせやすいとか、口が乾く、目が充血しやすいといった方で、どちらかというと若い方や体力のある方で見受けられ、季節的には春に発生しやすいという特徴があります。漢方薬では肝や胃の火(熱)を冷ますような処方が用いられます。

 更に、現代日本特有の事情として花粉症=アレルギー性鼻炎=鼻の粘膜の慢性的な炎症状態が続くことで、ちょっとした刺激で鼻血(この場合は上記の2パターンと違って、ごく少量)がでやすくなります(尚、花粉症で抗アレルギー剤などを使っていても、鼻の粘膜が乾燥しすぎて鼻血が出やすくなることもありますし、花粉症でない方も黄砂で鼻炎症状が出る方も多いです)。

 因みに、その他の鼻血のパターンとしては、胃腸虚弱が原因(脾不統血)となるパターンや、老化によるものなどが知られていますが、いずれも普段から身体の虚弱性がある方に見受けられます。これに対して、胃火や肝火による上記の2パターンは、普段体力がある方の方が発生しやすく、気にしだすとそのこと自体がストレスになって更なる肝火を発生させるということにもなりかねません。

 

 ※文献を詳しく調べたわけではないですが、万が一にも、放射能が原因で鼻血が出るとしたら、コトは鼻血だけですまないレベルだと思います。いずれにせよ、放射能の問題が収束するまでかなりの期間を要するようですので、大気中の放射線量が多い地域の方は外出時にはマスクの着用(特にお子さんや若い方)をお勧めします。

 

 

 

関連記事

  1. LEDのブルーライトが目の視細胞に障害を与えるメカニズム

  2. 今頃の“かぜ”

  3. 寒くなるとトイレが近くなるのはなぜ?

  4. 日本女性の肥満度が減少

  5. 「未病」について

  6. 中国(中医学)の新型インフルエンザ対策