火の賜物 ~ヒトは料理で進化した

Photo  ハーバード大学生物人類学教授でピーボディ博物館霊長類行動生物学主幹などを務める著者は、人類の進化の過程で“何がわれわれを人間にしたのか?”という疑問に対して、“火の使用と料理の発明”こそがその答えであるとし、考古学的な側面から、また現在のチンパンジーやゴリラの生態との対比などを通じて、わかりやすく解説しています。

 本書を読めば、火を使って食材を料理することが、どれだけヒトをヒトならしめているか、またヒトの社会の構成様式まで影響を与える画期的な事であるのかを思い知らされます。

 本書では更に、現代医学の知見や栄養学的な側面からも、食材を生のまま食べた時と加熱調理した時の栄養の吸収率の違いについて具体的なデータを元に解説しているばかりか、3大栄養素のカロリー計算に広く用いられているアトウォター係数に関して、調理方法や加工方法、食べ物の組み合わせなどによって結果は大きく異なり、“数値化は容易だが生理学的にあいまいで、食物の大まかな価値しか推定できない”と指摘しています。

(著者:リチャード・ランガム、依田卓巳 訳、NTT出版、2011年3月31日初版発行)

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 日本人は、生野菜や刺身、“加熱”はされていない漬け物や納豆を食べてきただけでなく、おにぎりなど加熱されていても冷(さ)めた状態で食べられるものを日常的に摂っているので、生ものや冷めた食材に抵抗がないですし、生の食材はフレッシュで健康的なイメージを抱きやすいように思います。

 東洋医学の食養生では、大昔から生冷過食、即ち「生ものや冷めたものを食べすぎてはいけない」という戒めがありますが、本書を読めば生の食材を食べることは、それこそ「ヒトの道(?)」にはずれる行為であることがよくわかります。

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