葛根湯について

わかりやすい漢方講座(その18)~葛根湯について

 一日の中で寒暖の差が大きくなってきましたが、周りでも結構、風邪を引いておられる方を見かけます。

 さて、漢方薬で風邪(かぜ)と言えば、葛根湯(かっこんとう)が一番有名な処方になるかと思います。葛根湯は江戸時代の落語(葛根湯医者)にも出てきますが、原典は約2000年前に編纂された「傷寒論(しょうかんろん)」で、「かぜのひき始めで、首の後ろが凝って、寒けがする時に用いる」と書かれています。

 ついでながら、「風邪のひき始め」という言葉の意味するところは、風邪(ふうじゃ)(※)という目に見えない「邪」が、体表部に張り付いて、体の中まで侵入しようとしている状況を表しており、この時に葛根湯を服用することで、この「邪」を、外に追い払おうとするものです。(※正確には、葛根湯の場合は「風邪(ふうじゃ)」と「寒邪(かんじゃ)」が一緒になったもの)

 日本で販売される医薬品の適応症は、西洋医学的な病名が書かれていますので、葛根湯の適応症として「かぜ、感冒」と書かれていても、どんな風邪にも効くかというとそうではありません。ただし、寒けがして首の後ろが凝ってきたという時に服用すれば、すぐに楽になることもあるくらいによく効きます。

 風邪(かぜ)に用いられる漢方処方は、かぜのタイプやその方の体質によって代表的なものだけでも10種類くらいはあります。葛根湯が有名だからといって、また、かぜに効くと箱に書いてあるからと言っても、その方の体質と漢方的な症状の把握を抜きにしては、あまり効果の期待できないこともありますので要注意です。

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