鹹野猪腿

20150224 塩漬けのイノシシのモモ肉です。鹹は塩辛い味を表し、野猪はイノシシを表します。日本では猪=イノシシですが、中国語で“猪”とだけ書けば日本でいう豚を指します。

 元もと、イノシシを家畜化したものが豚ですので、古くから豚肉を食べていた中国では猪=ブタで、敢えてイノシシを表すときに野猪と書きますが、この関係は鴨とアヒルでも同じで、中国で鴨と書けば、アヒルです(カモは野鴨と書きます)。

 牛や鶏は中国と同じ漢字が使われますが、日本では平安時代に肉食が禁じられて以後、数百年にわたって豚やアヒルを飼育することがなかった(牛は農耕用に飼育されていた)ため、このような違いが生まれたと思われます。

 さて、この歴史的にみて、消化するのにエネルギーを要する肉類を常食してこなかったことは、日本人の体質面にも影響しており、一般的に日本人は中国や韓国の人々に比べて胃腸が弱く、この事は江戸時代の貝原益軒が著した養生訓でも指摘されています。

 明治になってから肉食が解禁されたとはいえ、一般の家庭で日常的に豚肉や牛肉が食べられるようになったのは、昭和の後半になってからですので、ほんの数十年です。また、戦後の食生活の欧米化のスピードは異常なまでのスピードで進んだことから、一国の国民の食生活がこれほどの短期間で変わったというのは人類の歴史上でも希なことであると言われるほどです。何十世代にもわたって食べ慣れていないものを消化・吸収・代謝する能力がついてこない、すなわち胃腸に負担がかかるのは当然のような気がします。

 経済成長著しい中国でも牛肉などの需要は伸びているそうですが、中医学的な話題として、中国では肉食が増えると共に、体内に余分な熱がこもることから生じる疾患が増加しているそうですが、日本の場合は肉食が増えると胃腸虚弱になってむくみなど体内に余分な湿気や水分が溜まる疾患が増えており、これも日本人が一般的に肉食に適応していないことの表れのような気がします。

 栄養学だけから言えば、疲れたときに栄養を摂れば良さそうですが、漢方の考え方では、何を食べるかよりも胃腸の機能が良い状態を保つことの方が優先されます。 よって、胃腸が弱い方は疲れたときこそ高カロリーのものよりも胃腸に優しいあっさりしたものを食べる方が回復につながります。

 

 

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