中国医学から見た日本の子どもの荒廃

Photo  著者の竹原直秀氏は、鳥取市で竹原皮膚科医院を開業されているお医者さん(医学博士)で、中医学にも詳しい先生です。

 題名からは、青少年の犯罪の事かと思われるかも知れませんが、「からだ」の荒廃について書かれており、1990年の「子どものからだ調査’90」をもとに12年前に行われた調査と比較して、「最近増えている」という項目を挙げて、その主な原因が食生活の変化であるとして中医学的な角度から解説しています。

 因みに、78年の調査に比べて90年の調査で回答頻度が増えているものとしては、
(保育所)
・アレルギー     14.8倍
・つまずいてよく転ぶ 10.7倍
・転んで手が出ない   6.9倍
・背中ぐにゃ      6.0倍
・すぐ疲れたという   6.0倍
(小学校)
・アレルギー      3.4倍
・何でもないとき骨折  3.1倍
・転んで手が出ない   3.1倍
・背中ぐにゃ      1.6倍
(中学校) 
・アレルギー      3.0倍
・首・肩こり      2.6倍
・背中ぐにゃ      1.6倍
(高校)
・アレルギー      4.0倍
・首・肩こり      2.1倍
・背中ぐにゃ      2.0倍
・腰痛         1.7倍
などとなっています。

 90年時点での12年前との比較してという話ですが、現在でも悪化こそすれ、改善されていないであろう事は容易に想像がつきます。むしろ、天気予報で当たり前に花粉情報が流されるような現代では、上に挙げたような症状が「異常」ではなく「常識」になってさえいるかも知れません。

 著者は、子ども達の間で増え続けているこれらの症状が、中医学的に見ると「腎虚」であり、その原因として戦後の急激な食生活の変化を挙げています。即ち、1952年に給食制度が実施され、ついで1955年からは「栄養改善普及運動」の名の下に急速に食の欧米化が進み、それまで世界中のどの民族も経験したことのない様な急激な食生活の変化が起こった事で、食べ物の消化と吸収がうまくいかずに生命の根源物質である「精」の不足が生じたことで「腎虚」となり、背骨が曲がったり、アレルギー疾患が増加したとしています(漢方に於ける「腎」とその機能については、「五臓六腑〜「腎」を参照して下さい)。

 また、当時の考え方として「穀類やでんぷんばかり食べている国は貧しい国である」というような主張がなされ、より一層食の欧米化が進んだ事を指摘していますが、皮肉なことに生活習慣病に悩まされていたアメリカで1977年、上院に提出されたマクガバン報告には「でんぷん比率の高い国ほど健康的で、食の欧米化が病気の原因」で「高食物繊維・高複合炭水化物・低脂肪・低コレステロール・低砂糖が慢性病から守ってくれる」と書かれており、その後アメリカではこの考え方が国民の栄養指導のベースになっていったものの、日本では相変わらず間違った欧米崇拝傾向が続いてきたとも指摘しています。

 アレルギーの根本的な原因は、決して花粉やハウスダストではありません。花粉やハウスダストといったありふれたものに過敏に反応してしまう体の仕組みに問題があり、そういった体の仕組みになってしまった大きな要因が食生活であるということです。

(発行所:株式会社文芸社、2000年7月3日初版)

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