冬にかぜが流行るのは‘空気が乾燥する’から!?

 大いなる誤解(13)~冬にかぜが流行るのは‘空気が乾燥する’から!?

 立冬も過ぎて、そろそろかぜが流行る季節となりました。ところで、冬になると何故かぜが流行るのかという点について、ここ3年ほど薬剤師会が主催する漢方研修の際、のべ300人程度の薬学実習生に①気温が下がるから②空気が乾燥するから③気圧が下がるからの3択クイズ形式で聞いてみると、なんと9割以上が②の空気が乾燥するからと答えます。

 まあ、ここ最近は新型インフルエンザの流行などもあって、天気予報などでも空気が乾燥するとウイルスなどが飛沫感染しやすくなると言ってますので、空気の乾燥=飛沫感染=かぜが流行るとすり込まれているのかもしれません。確かに同じ温度であれば空気が乾燥している方が、のどの粘膜も乾きやすくなりますし、かぜを引きやすいと言えますが、冬にかぜを引きやすくなる要因としては寒くなる事が最大の要因となるはずです(夏や温かい時期に乾燥注意報が出てもかぜに注意しましょうとは言いません)。

 突きつめて考えてみると、かぜを引く事に対して、原因となるライノウイルスや細菌を重視するか、人体の抵抗力を重視するかという西洋医学と東洋医学の考え方の違いのような気もしますが、これから薬剤師として抗生物質や抗ウイルス剤に関わっていく事になる薬学生としては、どうしてもウイルスや細菌の方を重視するのは仕方がないのかもしれません。しかしながら、今の時代、薬学生でなくても空気が乾燥する=かぜが流行るという図式がインプットされている人は多いように思います。

 この事の何が問題かというと、冬になって部屋の空気が乾燥しないように加湿器を使ったり観葉植物を置いたりすることは、かぜの予防につながるのは間違いないのですが、寒くなることやからだを冷やすことに対して余りにも無頓着な人が多くなってきている事です。そして、この事が、現代人のかぜに限らず花粉症など様々な疾患のベースになっているからです。

 漢方では当たり前なのですが、からだを病邪とよばれるものから守っているのは“気”のエネルギーであって、“気”は陰陽では陽ですので、寒くなることは今風に言えば免疫力の低下に直結します。普通に考えても人間は恒温動物ですので、寒くなればなるほど体温を維持するのにエネルギーが要りますので、それだけ消耗するわけです。

 更に、おなか(胃腸)は“気”の主な発生源とされていますし、西洋医学的にも腸管免疫と呼ばれますが人体の免疫力に大きく関わっているところですので、おなかを冷やすことは、寒い時期でなくても避けるべきです。かぜを引きやすい事で悩んでいる方でも、真冬に冷たい飲み物を平気で飲んでいる人がいますが、その飲み物を頭からかぶってもかぜを引かないくらいのパワーをお持ちでない限り、お勧めできません。

 蛇足ながら、西洋でも冬にかぜが流行る理由として空気が乾燥している事を寒くなることよりも重視しているわけではないと思います。英語でかぜを引くことを‘catch a cold’と言うくらいですから。

 

 

 

   

 

関連記事

  1. カルシウムを摂っても骨が丈夫になるとは限らない

  2. 生理痛があるのは当たり前ではない

  3. “やわらかさは、やさしさです”

  4. 病気の治療は養生が7割

  5. 食養生の本当の意味

  6. 病名だけでは適した漢方処方は決まらない