神農さん

131122 毎年11月22日と23日は神農さんの愛称で知られる大阪・道修町(どしょうまち)の少彦名(すくなひこな)神社のお祭り、神農祭です。

 少彦名神社はオフィス街のビルの狭間にあってこぢんまりとした神社ですが、この両日ばかりは大勢の人出でにぎわいます。

 神社の名前の通り、日本に於ける薬の神様で笹ともご縁の深い少彦名命(すくなひこのみこと)と共に中国の伝説上の薬の神様、神農氏が祀られています。

 この神社のある道修町一帯は300年近く前から薬の街と知られ、現在でも日本の大手製薬メーカーが軒を連ねています。

 とは言え、最近では製薬業界も特に医療用を中心に外資系の攻勢の前に国内メーカーは合併につぐ合併で、会社の数も相当減ってしまいさみしい限りです。因みに、医療用を中心とした医薬品の貿易赤字額は数年前に1兆円を突破してその後も増え続けています。

 ところで漢方の世界では神農氏の名前を冠した神農本草経という書物が有名で、現存する中国最古の薬物書として知られています。この書物には365種類の生薬が記載されており、上品、中品、下品の3つに分類されていおり、その分類方法というのが現代の西洋医学的な薬効分類ではなく、人間にとって無害で命を養う薬(上品)、使い方によっては害を及ぼすかもしれないが基本的に有益な薬(中品)、効果はあるが副作用リスクが高いので必要最低限の使用にとどめておくべき薬(下品)に分類されています。つまり、東洋医学の特徴でもあるのですが、あくまで人間を基準にして薬を分類しているわけで、現代のようにモノを中心に薬効別に分類しているわけではありません。

 現代の医薬品を神農本草経に倣って分類すれば殆どが下品に分類されることになると思われます。更に挙げれば、現代の薬は確かに良く効きますが、薬が効くことと病気が治ることは同じようで、実は全く関係がなくなってきているのも事実です。睡眠薬、安定剤、糖尿病の血糖降下剤や降圧剤、コレステロールを下げる薬などどれも効きはしますが、その病気が治るわけではありません。

 これに対して漢方薬は基本的に人間の自己治癒力を引き出す方向で効果を発揮しますので、薬が効くことと病気が治ることは同じ延長線上にあると言えます。ただし、前提条件として養生することが求められており、養生無しで薬だけ飲んでも、あまり効きもしなければ治りもしません。もちろん西洋薬が多用されている病気に於いても養生をしっかりすれば、治るというか、そもそも病気にはなりにくいわけで、西洋薬を飲むにしろ漢方薬を飲むにしろ、養生こそ病気を治すためには最も大事と言えます。

 

 

関連記事

  1. 阿波踊りと糖尿病、自殺率

  2. 上巳の節句

  3. かわ屋さんの“鶏皮”~福岡

  4. “ひよわ”になった日本人

  5. お屠蘇(とそ)について

  6. こいわしの刺身、がにめ~広島