脳はバカ、腸はかしこい

Photo  東京医科歯科大学名誉教授、人間総合科学大学教授にして「キセイチュウ博士」としても知られる藤田紘一郎先生の新刊です。

 脳腸相関として近年注目を集める腸と脳の関係を、科学的な論文を引き合いに出しつつ、日常の中でも見られる具体例を挙げて解説されています。

 本の帯には、「脳にばかり注目していると見落としてしまう大切な話」として、“脳には性的モラルがない”、“意志薄弱で偏見まみれ、うぬぼれ屋の脳”、“腸内細菌が「幸せ物質」を脳に運んでいる”、“脳は糖を欲しがり、腸は糖の摂りすぎを嫌がる”、腸を整えると、トキメキ&ドキドキの恋愛が長続き”、“生物と腸との歴史は40億年、脳とはたった5億年”などが挙げられており、セカンドブレインとしての腸、特に腸内細菌バランスの善し悪しが人間の健康に影響すると共に、ストレスが腸内細菌バランスに悪影響を与え、腸内細菌バランスの悪化が脳にストレスを与えるといった関係がわかりやすく記されています。

(2012年11月初版発行、三五館)

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 著者は、精神的なストレス、塩素の多い水道水やタバコや排気ガス、農薬や食品添加物などは腸内で活性酸素を発生させ、腸内細菌バランスを悪化させると指摘されていますが、現代人の生活で最も問題になるのは食生活の問題だと思います。特に活性酸素を消し去る抗酸化物質は野菜や果物から摂る必要がありますが、これらは加工食品の形で摂ったり、あるいは電子レンジで加熱することでもかなり減少します。

 食品を単にカロリーの供給源や栄養素の集合体だという感覚は大きな間違いで、本書を読むと、日常の食事が腸内細菌バランスに対する影響を通じて精神状態や免疫力にまで影響を与えることがわかります。

 また、本書では人間の脳の発達についても触れられていますが、スウェーデンとシンガポールの研究チームの論文から、腸内細菌の影響は新生児の脳の発達段階にも組み込まれているとする見解を紹介し、幼少期の腸内細菌バランスの善し悪しは初期の脳の発達に影響を及ぼしており、大人になってからでは取り返しがつかない可能性が高いことも示唆されています。また、5才から18才の睡眠時間と脳の海馬の体積を調べた東北大学の研究が紹介され、睡眠時間が10時間以上の子どもは6時間以下の子どもに比べて海馬の体積が1割以上大きく、よく寝る子ほど脳が成長するとしています。

 以前、「弁当の日」の活動を精力的に続けておられる竹下和男さんの講演で、人間の味覚の発達は3才から9才で、それも3才がピークで9才でほぼ決まってしまうという話を聞いたことがありますが、小学校に上がるまでに家庭できちんとした食事をすることや夜更かしせずによく寝ることが、その後の一生に大きな影響を与えることがわかります。

 

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