麝香はその独特の芳香が最大の特徴で、「麝」という文字はその香りが(矢を)射るように遠くまで伝わるということから「鹿」の下に「射」という字が当てられています。中国語では「麝」という文字がジャコウジカを表し、生薬の麝香は「麝の臍にある匂い袋の香り」ということで「麝臍香」ともいわれます。
漢方の世界のみならず、その芳香はヨーロッパなどにおいても高級香水の原料にも使われ「MUSK」と呼ばれています。因みに日本のマスクメロンのマスクとは、すばらしい香りがすると言うことから、この麝香を意味するMUSKから名付けられたものです。また麝香はかつて日本薬局方に収載されていた時(第10局まで)の「乾燥減量」の項目で、24時間常温において35%以下という規定があって、この事は麝香がいかに揮発性が高いか、すなわちその薬効の本体が香りであるということを示していると考えられます。
さて神農本草経において麝香は命を養う上薬に分類され、薬効としては「悪気を避けさせ、幽霊やもののけのたたりを消し去るほか、人に悪い影響を及ぼす邪気を除き、そのためよく夢をみて飛び起きたり、あるいは寝ていて悪夢にうなされるといったことがなくなる」と記されています。
また、これより500年程後の時代に「本草経集注」を著した陶弘景は、麝香について「身につけたり枕元に置いておくと悪夢や死人のたたりをしりぞける」と述べています。これらの記述は文字だけを追っていけばオカルト的な表現に見えますが、「邪気」や「たたり」を「ストレス」に置き換えて考えるとわかりやすいと思います。
すなわち精神的なストレスからなかなか寝付けなかったり、夜中に何度も目が覚めたり、寝苦しかったり、あるいは昼間でも急にドキドキしたりするといったことは日常よく見られることですが麝香の香りはこれらの症状を改善してくれるというわけです。
現代医学からみれば睡眠とは入眠直後の俗に寝入りばなといわれる深い睡眠状態(ノンレム睡眠)と浅い眠りであるレム睡眠を何度か繰り返して朝を迎える訳ですが、昼間にストレスを受けると半覚醒状態でもあるレム睡眠の時に神経が興奮し「飛び起きたり」、目が覚めないまでもなかなか深い眠り(ノンレム睡眠)に入ることが出来なくなります。
このためノンレム睡眠時によく分泌される成長ホルモンが分泌されずに心身共に疲れがとれないばかりか、このような状態が長引くとホルモンバランスの乱れや免疫力の低下といった事態も招きかねません。これに対して麝香はストレスで乱れた睡眠のリズムを正常化し、ぐっすりと眠れるようにしてくれる作用があるという事で「命を養ってくれる」というのが2000年以上前から知られていたという事になります。
実際に店頭でストレスに悩まされている方が胃腸の不調や動悸などの相談で来られた場合に睡眠の状態を尋ねるとまずぐっすりと寝ているという人はいないと思います。こういったときに救心感応丸氣を2、3日だけでも試してもらうと昼間の症状のみならず睡眠状態が改善して感謝されることが多いものです。習慣性もなく、妊婦さんを除いて安全性の高い麝香は最高の睡眠状態改善薬といえます。
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